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日経新聞を10倍おもしろく読んでみるブログ

お堅い日経新聞10倍おもしろく読むブログです。コメントは独断と偏見が混じっています。

倉本聰さんが、北島三郎さんの付き人をしていた話

文化

日本経済新聞の最後のページに「私の履歴書」が連載されている。

1か月一人の人に、自分の半生を綴ってもらう記事だ。今月は脚本家の倉本聰さんだ。

倉本さんはNHKの大河ドラマの脚本も書いているのだが、それが原因でテレビ界から干され、北海道で地元のテレビ局に脚本を書いていた時期がある。

その時に、「幻の町」という単発ドラマの脚本を書き、出演者に北島三郎さんを使っていた。

 

多忙な北島さんなので、東京からロケに加わることになっていたのだが、千歳空港から大渋滞に巻き込まれてしまった。

そこで、タクシー会社に北島さんのハイヤーの位置を無線で知らせてもらうことにしたそうだ。

「サブちゃん、銭函インター通過」

「小樽まであと15分」

ロケの見物に集まった地元の人たちがそのたびに歓声を上げ、到着すると大喝采でそうそうたる出演者がそろっているのに完全に主役だった。

このサブちゃん人気を見て、倉本さんは付き人になると決めた。

付き人は3人いて、倉本さんは4人目の付き人だ。その冬、函館、大畑、青森、黒石などを巡る演歌公演に同行した。小さな町の体育館などを巡る。

午後1時からの公演に、午前11時ごろから老若男女が集まり始める。開場と同時に満員だ。持参の座布団を床に敷き、毛布を膝にかけてサブちゃんの登場を待ち構えるのである。

公演は、第1部がヒットパレードで第2部がリクエストタイム。このリクエストタイムに倉本さんは感動したという。

北島三郎さんは、北海道を出て、東京の渋谷で何年も流しをしていたそうだ。全く私はそのことを知らなかった。その時にリクエストされて唄えなかった歌は一つもないという。

「なんでもこい!」という感じで、みんなが曲名を言うと、小気味よくさばいて次々に歌う。

サブちゃんと客のやり取りには垣根がない。年齢や性別、職業や身分など一切の区別がない。人と人とが水平にぶつかり合う。

これを見て倉本さんは自分の隠れたエリート意識、「上から目線」に気がつき、「地べた目線」でドラマを書くぞ、と決めたという。

 

演歌に限らず、歌手の人は少なからぬ苦労をされた方が少なくない。それを感じさせないのは、唄うことが好きで好きでたまらないという気持ちがあるからかもしれない。

北島さんのように、流しを何年も続けてでも大成したいという執念が歌に感動を呼ぶのだろう。

歌手の付き人という経験は今までにできなかったが、倉本さんのおかげでスターの隠れた裏面を意識させてくれた記事だった。

 

 

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